さどうぶ!
※下ネタ注意
第1話:スカートめくり

「スカートめくりって、ここは高校よ。どうしてそんな幼稚なことを。ていうか、めくったところで体操着の短パン履いてるのに!」
「なんでも、昼休みにあちこちの教室に乗り込んで女子のスカートをめくりまくったそうだ。もちろん、移動中の廊下ですれ違った女子のスカートももれなくめくっていったらしい。泉はめくられなかったのか?」
「いや、あたしは別に、ていうかそんな騒ぎがあったことも今知ったし」
「まあ、泉の昼休みは机で寝たふりして過ごしてるだけだからな。さすがに椅子に座ってる女子のスカートまではめくれまい」
「そんな寂しい昼休みじゃないわ! 友達と優雅に談笑して過ごしてたわよ! 寝たふりしてるのはトーヤの方でしょ!?」
「しかし、下に体操着履いてるんなら、別にめくられたって問題ないんじゃないのか?」
「ていうか、めくられるのがそれだけで気持ち悪いのよ」
「ふむ、男の俺にはわからんな。しかし、校内の平和を乱す輩がいるのは見逃せん。茶道部部員として成敗せねばなるまい」
「いや、ここはそんな風紀委員的な役目を課せられてはいないけど」
「忘れたのか泉! 我ら茶道部は今年中に部員を二名確保しないと廃部なのだぞ。校内の不埒な輩を成敗すれば、茶道部の評判が上がって入部希望者が現れるかもしれん」
「いや、本来の活動と関係ない事で呼びこんでも……」
「よし、まずはそのスカートめくり魔をおびき寄せる必要があるな。明日の昼休みを狙おう。泉、明日は下着と女子用制服を着て来てくれ」
「今日は着てないみたいな言い方すな!」
「おっと、言い方を間違えたな。泉、明日の昼休み制服で、スカートの下には下着を隠すズボンの類を履かずに来てくれ」
「ちょっと待って。もしかして、私を囮にするつもりなの? ていうか、おびき寄せるだけなら別に下にズボン履いててもいいんじゃ」
「いや、それではいかんのだ。俺の聞いた情報では、スカートめくり魔はすさまじい速さでめくってはすぐに去っていくそうだ。しかし、めくった中身が本当に下着だったらどうだ。きっと、動揺で動きが止まるに違いない」
「でも、もしホントにめくられたら……」
「泉」凍矢が泉の両手を包むように握る。「俺がスカートを履いて囮になることはできないんだ。泉のような美少女でないと」
「美少女って……」泉は咄嗟に凍矢から目を逸らす。「まあ、トーヤがどうしてもって言うなら――」

翌日の昼休み。
泉はスカートの裾を押さえながらそわそわしていた。
突然、廊下の奥から女子の悲鳴が聞こえた。
――来る!
泉は身構える。
悲鳴の方向から、すさまじい速さでこちらへ向かってくる何かが現れた。速すぎて本当に人間なのかどうかさえ疑ってしまうほどだ。
「うきょきょきょきょー!」
奇声をあげながらそれは廊下を歩いている女子のスカートを順にめくりながら、確実に泉に迫ってくる。
そしてついに、それは泉のスカートを掴み、裾を押さえていたのもかまわず、盛大にめくりあげ、スカートの中を見るやいなや、動きが止まった。
ガラッ
目の前の教室の扉が開く。
「貴様がスカートめくり魔かあ!」
教室で待ち伏せていた凍矢が泉のスカートの中を凝視するそいつを後ろ手で拘束した。
泉はようやく重力のままに自然体に戻ったスカートを何でもなさそうに手ではたいた。騒ぎでこちらを見ていた生徒と目を合わせると、皆すぐに目を逸らした。

パイプ椅子に縛り付けられたスカートめくり魔と向かい合う凍矢。
「どうして女子のスカートをめくったんだ」
「めくりたかったからさ。君だって、子供の頃は女の子のスカートをめくって遊んだだろう?」
「あれは子供だから許されたんだ」
「めくってたのかよ。サイテーだな」
机の脇でむすっと腕を組んでいた泉が凍矢に軽蔑の眼差しを向ける。
「泉は黙っていてくれ! これは男同士の真剣な話なんだ」
「そうだそうだ! 黒レースは黙ってろ!」
「大人ぶりやがって」
「うるさーい!」泉は両手でバシンと机を叩いた。「何でスカートめくり魔と意気投合してんのよ!」
「泉、こいつをスカートめくり魔などと低俗な名で呼んでやるな。ちょっと子供心を捨てられなかっただけの純粋な男ではないか」
「ええい」泉はスカートめくり魔の頭を後ろから両手で挟み込み、押しつぶすように力を加えた。「こいつの、何が、純粋なんだよ!」
「ちょ、痛い痛い! やめろ、この暴力女」
「うるさい! こちとらお前の記憶を消してやりたいところなんだよ」
「待て泉。さっき見て気付かなかったのか。こいつのスカートめくりの才能は本物だ」
「はあ? 才能? ちょっと凍矢、もしかして――」
「なあ、もしよかったら茶道部に入らないか?」
「私は反対よ」泉はスカートめくり魔を挟んでいる両手の力を強める。「こんなやつが入るんなら、あたしが辞めるわ」
「じゃあ、入部テストをしてはどうかしら」机の下から声がした。
「部長、いたんですか」
「ええ、今朝からずっと机の下よ」
「いや、授業は出てくださいよ」
泉が溜息交じりに突っ込む。
「入部テストとは、何ですか?」
凍矢が机の下に話しかける。
「あなたたちもテストを受けたでしょう。彼にも受けてもらうのよ」
「しかし部長、いくらスカートめくりの才能に長けていたとしても、あのテストをクリアするにはまだ……」
泉は考えていた。
――テストなんて受けたかな?
「ええ、それは私も承知しているわ」部長がのそのそと机の下から出てくる。「だから、彼に合わせた入部テストを実施します。日時は明日の昼休み。では、解散」

さらに翌日。昼休み。ちなみに場所は放送室。
「さて、いよいよ始まります。入部テスト改め第一回スカートめくり選手権。実況は茶道部部長の私が。解説は、はい」
「あっ、えっと、泉です」
「この二人で視聴者の方に会場の様子をお伝えします。さて、もうすぐスタート時刻ですが、解説の泉さん、はっきり言ってこの勝負はどちらが勝つと思われますか?」
「えっ、いや、まあアタシ的にはトーヤに勝ってほしいんですけど」
「なるほど、泉さんは凍矢選手のことが好きですからね」
「わ、ちょっと部長、何言ってるんですか」
「おっといけない。これ、校内放送に入ってるんでした。あまり不用意な発言は控えないと。でも、ここからラブコメに発展させる伏線は欲しいですからね。さて、ではスタート位置の校門の様子を見てみましょう。カメラさん、校門に寄れますか? はい……、そうです。あ、オッケーです。さて、両者とも準備運動の最中みたいですね」
「あの、部長、放送室に映像設備なんてありましたっけ? ていうか、カメラさんって――」
「なるほど。おや? スカートめくり魔選手が独特な動きをしていますね。解説の泉さん、あれはどういった意味があるのでしょう?」
「いや、どう見てもスカートをめくる動作なんですけど……」
「なるほど。では、最後にもう一度ルール説明をしましょう。勝利条件は極めて単純。より多くのスカートをめくった方が勝ちです。もちろん、一度めくったスカートをもう一度めくっても得点にはカウントされませんのでご注意を。制限時間は昼休みいっぱいとなっています。さて、第一回ということですが、泉さん、このルールは適切でしょうか?」
「いえ、適切とかそういう次元じゃないと思います」
「なるほど。さて、もうすぐ昼休みが始まりますね。昼休み開始のチャイムが、そのままスタート合図となります」
「部長は、こんな下らないことのために四限目の授業をサボらせたアタシとトーヤに責任を感じてくださいね」
「なるほど。さて、私の高級電波腕時計によれば、スタートまで十秒を切りましたね」
「あの、部長。私が解説役だからって、『なるほど』の一言で済ませるのやめてください」
「なるほど。あと三秒。2、1――」
キーン、コーン、カーン、コーン
「さて、両者一斉に走り出した。向かうは当然南校舎。解説の泉さん、ずばり、ねらい目はどこになると思いますか?」
「えぇ、そうですねえ、購買なんか人が多いんじゃないですか?」
「なるほど。購買は北校舎ですから、そこを狙うなら南校舎を抜けるはずですが、おっと、凍矢選手が南校舎の階段を上り始めました。解説の泉さん、これはどこへ向かっているのでしょう」
「さあ、どこでしょうね」
「なるほど。一方のスカートめくり魔選手は……、どうやら泉さんの言う通り北校舎を目指しているようですね。しかし、これは購買に向かっているようには見えませんが。はっ、まさか……」
「たぶんそうでしょうね」
「解説の泉さん、これはどういうことでしょうか」
「いや、普通に体育後の女子を狙ってるんでしょう、あれは」
「なるほど。確かに、更衣室には放送が届きませんからね。この放送が聞こえていないということは警戒心も薄いはずです」
「対する凍矢選手は、おっと、我らが茶道部の部室で優雅にお茶を飲んでいますね。これは、どういうことでしょうか。解説の泉さん」
「部員が欲しいから、わざと負けるつもりなんじゃないですか」
「なるほど。さて、スカートめくり魔選手は……、めくっています。着替えを終えて更衣室から出てくる女子のスカートを次々とめくっています。いやあ、爽快ですね。しかし残念なことに体育後ということで皆スカートの中に体操着の半ズボンを履いていますね」
「……こうやって見ると、なんか哀れだな」
「おや、凍矢選手に動きがありました。なんと、茶道部室に行列ができています。これは……、男子生徒です。スカートを履いた男子生徒が続々と茶道部室に集まってきています。さながら列を作る働きアリのようです。解説の泉さん、これは一体何事でしょうか」
「あー、トーヤの考えそうなことだわー」
「なるほど。おっと、部室の扉に何か張り紙がしてありますね。カメラさん、アップできますか?」
「部長、カメラさん何人用意したんですか?」
「おっと、何々――」
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「ふざくな!」
「これはルールの穴をうまく突いてきましたね。ルール上では女子のスカートと限定してませんから。ただ、どうやって男子にスカートを履かせるかというのが鬼門でしたが、凍矢選手は見事にそれを解決してみせました。解説の泉さん、どうですか」
「トーヤサイテー!」
――何が囮だ。ちゃっかり写真撮りやがって!
「これは変態男子が多い我が校の特色をうまく練り込んだ見事な作戦ですね。解説の泉さん、どうでしょう」
「一番の変態はトーヤですね」
「なるほど。つまり泉さんは凍矢選手のそういった面も含めて好きなわけですね」
「やめろ!」
「我が校の男子ほどの変態なら、確実に泉さんの写真を取りに行くでしょう。学内の男女比は男子の方が多いですから、スカートめくり魔選手の勝ち筋は凍矢選手が用意したスカート男子のスカートもめくるしかなくなりますね。はたして、彼のスカートめくりに対するプライドがそれを許すのでしょうか。彼は男子のスカートもめくれるのでしょうか」
スカートめくりにプライドなどあったものか、と泉は内心叫んだのだが、実際はあったようで、スカートめくり魔は懸命に女子のスカートをめくり続けたが、結局男子には手を出せず、凍矢の圧倒的な勝利となった。
ちなみに試合後の凍矢はこう語っている。
「目を閉じて、スカートをめくる感覚だけを感じ、それが可愛い女の子のものだとイメージするんだ。楽しかったぞ」

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