さどうぶ!
※下ネタ注意
第1話に戻る
第2話:トイレ巡り

そわそわ
きょろきょろ
すたすた
「泉、あの男子を見てみろ。そわそわきょろきょろすたすたしているぞ」
「してるわね」
「あれをどう見る?」
「どう見るって……、ただの挙動不審なだけにしか見えないけど」
「ふっ、これだから常に個室の女子は」泉を馬鹿にするように凍矢は鼻で笑った。「あれはどう見てもウンコするトイレを探している生徒だろう」
「下品だわ」
「俺にも覚えがある。特に小学生の頃など、ウンコしているところを同じクラスの者に見つかりでもしたら、その先一週間はウンコマンと呼ばれるんだぞ。きっと彼も幼少期にそんなつらい思いをしたに違いない。それがトラウマで高校生となった今でも学校で安心してウンコできないんだ」
「アタシを下ネタに巻き込まないでくれる」
「よし、彼を安全なトイレに案内してあげよう。もしかしたらお礼に茶道部に入部してくれるかもしれん」
「もう見境なしね」
「泉だって、茶道部がなくなると困るだろう」
「まあ、困らないことも、ないけどさ……」
「じゃあ決定だ」そう言い置いて凍矢はそわそわしている彼に声をかけた。「やあ、安全なトイレを探しているのだろう? よかったら茶道部部員である我々が探してあげよう」
「本当ですか? ありがとうございます!」
「ああ、茶道部は素晴らしいだろう」
「素晴らしいです!」
こうして、凍矢とそわそわしている彼、そして泉の三人による校内トイレ巡りが始まった。
――ていうか、アタシいらなくね。
泉はトイレ前で待ち、凍矢とそわそわしている彼が二人で男子トイレに入り様子を窺う。
「駄目だ。ここの個室も満員だった」
「えー、もう三個目のトイレなのに。ていうか、男子のトイレも結構個室埋まるのね」
「いや、これは我が校だけだろう。普通の男子トイレで個室が埋まることは極めて珍しいのだが、我が校には変態が多いからな。休み時間の度に個室で抜いているのだろう」
「抜く? 何を?」
「ナニをと言われればナニとしか言えないが、まあ、泉にはまだ早いな」
「はあ? 早くないわ! 私だってとっくに生えてるわ!」
「いや、毛を抜いてるわけではない」
「じゃあ何を抜いてんのよ」
凍矢は何も言わず、やれやれといった風に手のひらを上に向けて首を横に振った。
「じょ、女子トイレなら空いてるかも」
そわそわしている彼が提案した。
「ふむ。確かに、空いているというのなら、そちらの方が空いているかもしれんな。我が校の女子は変態ではないからな」それから凍矢は泉に向く。「泉、彼を女子トイレに案内してやってくれ」
「はあ!?」
と言ったものの、いつものごとく泉は凍矢に押し切られた。

「ほら、ここなら女子生徒が来ることなんて滅多にないはずよ」
「つまり泉がウンコするときはここで――」
「うっせ! じゃあ、とりあえずアタシが見てくるから」
そう言い置いて泉は一人で女子トイレに入り、個室が全て空いていることを確認した。
「誰もいないよ」
「それはよかった。さあ、行きたまえ」
凍矢がそわそわしている彼を促す。
「ありがとう」
そわそわしている彼も、泉がいる女子トイレに入った。
「あの、泉さん。誰も来ないか見張っててもらえますか」
「ええ、まかせなさい」
泉は胸を張って応えた。
そわそわしている彼が個室に入り、内側から金属の閂を締める音。
最初は静かだったのだが――
「はあ、はあ……、泉ちゃん……」
「えっ」
泉は咄嗟に二、三歩後退した。生理的嫌悪感が込み上げてくる。
「はっはっは、う、泉ちゃん、中に出すよ。はあ、はあ、はあ、はっはっは、うっ」
――抜くってもしかして……。
こうして泉は無駄な知識を一つ身に着けた。この学校に変態でない男子がいないことも改めて実感した。そして、この個室をこれから使わないようにしようと心の中で誓う。
それから、茶道部に入部しようとするそわそわしていた彼と、それを快く承諾しようとしていた凍矢を泉は全力で止めた。
ちなみに、トイレ内での事の次第を凍矢に話すと、凍矢はこう言った。
「まあ、女子トイレで抜く方が興奮できるからな」

第3話に進む
トップへ