さどうぶ!
※下ネタ注意
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第3話:夢メガネ

「パンパカパーン」
そう言って机の下から出てきた部長が手に掲げていたのは、何の変哲もないメガネだった。
「部長、やっぱり今朝からいたんですか?」
「もちろん。やっぱり今朝からよ」
泉の問に部長は何でもなさそうに答えた。
「授業は出てくださいよ……」
「それより部長。ついに完成したんですね、夢のメガネが!」
「そうよ。凍矢君の期待通り、いや、それ以上のものが完成したわ」
「さっそく、使ってみてもいいでしょうか」
「もちろん」
差し出された凍矢の手に、部長がそのメガネを授けた。
凍矢が緊張した面持ちでそのメガネをかける。
「なんと! さすが部長。完璧じゃないですか」
「それ、何か特別なメガネなの?」
「何を言っているんだ泉。これは世の男性の願いを叶える夢のメガネだぞ」
「世の男性の願い……?」
「いわゆるスケスケメガネってやつよ」部長が素っ気なく言った。
「スケスケって……」
凍矢は泉の顔を見て、それからゆっくりと視線を下げていく。
「ふっ、見える。見えるぞ」
「ちょ、ちょっと」泉が咄嗟に凍矢が見ているであろう個所を両手で隠す。
「隠しても無駄だ。見えるぞ」そう言ってから、凍矢は鼻で笑った。「おいおい泉、いくら彼氏がいないからって手入れサボりすぎじゃないか。そんなに伸ばしっぱなしにしていると下着の隙間から――」
「ふざくな!」
泉は凍矢のメガネを外しにかかったが、部長の手に止められてしまった。
「恥ずかしい気持ちはわかるけれど、せっかくの発明を壊されたくないわ」
「あ、えっと、すみません……?」
「凍矢君も、泉ちゃんの裸なんてその気になればいつでも見れるんだから、他の子の裸を見てきてはどうかしら」
「いつでも見れる言うな! いくらトーヤに迫られたって、女としてそんな簡単に脱ぐわけないし!」
「あっはっは」
「うふふ」
「笑うな二人とも!」
「しかし、部長の言う通りだな。まずは教室から行くか」
「私も行こう」
「あ、部長が部室から出るなんて珍しいですね」泉も慌てて二人についていく。
「自分の発明品は気になるからな」

ちょうど昼食を終えた頃合いのようで、教室は賑わっていた。
「ふっ、見える。見えるぞ」
「トーヤサイテー」
「いいえ、凍矢君は女子生徒の裸を見て満足するような男ではないわ」
「いえ、部長。お言葉ですが、トーヤは女子生徒の裸を見て満足する男ですよ」
「ふふ、泉ちゃんは凍矢くんの素質に気づいていないのね」
「トーヤの素質?」
「そう。私は女子の裸を見て喜ぶだけのような男に、スケスケメガネを渡したりはしないわ」
「それってどういう――」
「ふはははは! 我がクラスの男子どもよ。ひれ伏せ!」
「ちょ、ちょっとトーヤ、どうしたの」
学校の男子生徒ほぼ全員から嫌われている凍矢が男子を馬鹿にするような言葉を吐いたのだ。クラス中の男子が凍矢に対してブーイング。
凍矢は自分にブーイングしている男子の一人に近付く。
「な、なんだよ」
凍矢が男子生徒の股間を凝視する。
「短小」
「ぐはっ」
男子生徒ノックダウン。
凍矢は次のターゲットに向かう。
「皮被り」
「ぐはっ」
「何で勃起してんの?」
「ぐふっ」
「黒すぎ」
「なっ」
「あ、玉ないんだ」
「おっふ」
凍矢の一言に次々とやられる男子生徒たち。
「さすが凍矢君ね。スケスケメガネであえて男子生徒のアレを見るなんて。こんな攻撃的なスケスケメガネの使い方が、いまだかつてあったかしら」
それから凍矢が学内の男子全員を黙らせたところまではまだよかったのだが、いよいよ凍矢は学外にまでその被害を広げようとしていた。
「あの、部長、さすがに学校と関係ない人に被害が出るのはまずいのでは……」
「ええ、そうね。開発者の私の威権にも関わるわ」
「どうにかトーヤをとめないと」
「そうね」

校門を出ようとしていた凍矢の前に、部長が立ちはだかる。
「部長、どいてください」
「もう満足でしょう。学外への侵攻はやりすぎよ。メガネを外しなさい」
「部長の命令でもそれは従えません」
「そう。でも、凍矢君はそのメガネを外すことになるわ」
「いいえ。外しません」
「じゃあ仕方ないわね」
そう言って部長が取り出したのは、姿見。
見ていた泉は思った。
――姿見って、全身移る大きい鏡でしょ。取り出したって、どうやって取り出したの。取り出すとかそういうことができる大きさのものじゃないし。いや、そもそもスケスケメガネなんてものを開発できる人だし、四次元ポケット的なものを持ってるのかも。
泉は考えるのをやめた。
「これは……」
姿見に移る自分の姿を見つめたまま、凍矢は動かなくなった。
「さあ、メガネを外せば楽になれるわよ」
「くっ……、さすが部長だ」
凍矢は悔しそうにメガネを外した。
泉は部長に駆け寄って尋ねた。
「これも、何か特別な鏡なんですか?」
「いいえ、普通の姿見よ。まあ、自分のアレに自信のある男なんていないってことよ」

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