単発ショート
檻の俺

俺が檻に閉じ込められて、どれくらい経っただろう。
檻の外には窓があり、そこから外の景色を一部だけであるが見ることができる。今はすっかり明るく、日差しも届いている。この檻に入れられたときは叫び暴れたものだが、夜は静かで、外よりもぐっすり眠ることができた。しかし、俺はそれを表に出さず、なんて居心地の悪い檻なんだ、という顔で檻の外を睨みつける。外にいる人は、俺がどんな顔をしていようと特に気に留めないようだが。
食べ物は最低限だけ用意されている。腹八分目に抑えておかないと、夜までもたない、本当にぎりぎりの量だ。もっとも、夜の食事が足りなくなって、新しい食事が入ってくる朝に食べ過ぎて、また夜の分が不足するという悪循環に囚われてしまっている俺であるが。しかし水は大量にある。一日で全て飲むことは不可能だ、と断言できるほど。にもかかわらず、毎朝新しい水に入れ替えられる。食べ物と水の量が不釣り合いなのだ。
外から男が一人檻に近付いてきた。彼がここの主人らしい。男は檻の扉に手をかけ、何をするのかと思えば、それを軽々と開けたのだ。そう、檻に鍵はかかっていなかった。しかし、扉は昇降式のもので、俺の力ではどうやっても持ち上げることができなかったのだ。それを平気そうにやってのけた主人に驚きを隠せず、数秒は動けずに留まっていたが、これは檻から出るチャンスではないかと自覚し、すぐさま実行した。檻の中に残っている今日の分の食べ物が若干心残りではあったが、羽を伸ばして思い切り室内をぐるりと一周飛び終えて戻ってくれば、そんなことは些細なことだとすっぱり諦めることができた。
それから、俺は檻を開けてくれた主人の肩にとまり、甘い声で鳴くのだった。


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